カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?重要視される理由や向上方法などを解説
カスタマーエクスペリエンス(CX)は、顧客が商品やサービスを選ぶ際の大きな判断材料となっています。
顧客が満足できる体験を提供できれば、リピーターの増加やブランドの地位向上につながり、結果として利益拡大も期待できるため、カスタマーエクスペリエンスの向上を目指しましょう。
本記事では、カスタマーエクスペリエンスの意味や重要視される理由、向上する方法などを解説します。
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?
カスタマーエクスペリエンスとは、顧客が商品やサービスを認知し、購入、利用、さらにはアフターサポートを受けるなどの一連の体験をさします。
単なる製品の性能や価格だけでなく、「どのように商品を知るか」「購入の際にどんなサポートがあるか」「購入後も満足できるか」などの感情的な満足度や企業への信頼感も含まれます。
例えば、理解しやすい説明やスムーズな購入手続き、親切なカスタマーサポートがあれば、顧客がより良い体験と感じ、企業への印象も向上します。
顧客の満足度や顧客体験の質を高めれば、リピーターの増加やブランドロイヤリティの向上にもつながるため、企業が取り組むべき重要な要素です。
カスタマーエクスペリエンス(CX)が重要視される理由
カスタマーエクスペリエンスが重要視されるようになったのは、2000年頃からと考えられます。
インターネットやSNSの普及により、顧客は企業からの情報発信だけでなく、顧客目線の口コミやレビュー動画などの第三者の情報を簡単に手に入れられるようになりました。
結果、単に機能や価格で選ばれる時代が終わり、顧客が商品やサービスを購入して得られる体験価値が重要視されるようになりました。
「経験価値マネジメント」の著者であるバーンド・H・シュミットは、合理的な価値とは別に、感情的な価値を以下の5つに分類しています。
Sense(感覚的)
【概要】
五感に訴える体験を通じて顧客の関心を引き、満足度を高める体験
【具体例】
店舗の内装デザイン、音楽、香り、パッケージなど
Feel(情緒的)
【概要】
感情や気持ちに働きかけ、感動や共感を生む体験
【具体例】
心温まる広告、ストーリー性のあるブランディングなど
Think(知的)
【概要】
顧客の知的好奇心を刺激し、創造性や問題解決への思考を促す体験
【具体例】
斬新な製品コンセプト、学びを得られる体験など
Act(行動、ライフスタイル)
【概要】
顧客のライフスタイルや価値観に影響を与え、新たな行動を促す体験
【具体例】
サステナブルな商品提案、フィットネスアプリなど
Relate(社会的)
【概要】
他者やコミュニティとの関係性を築き、共感や連帯感を生む体験
【具体例】
ファンイベント、SNSを活用したコミュニティ形成など
顧客との接点の体験価値を高めることで、顧客満足度やリピーターの獲得、ブランディングなどの効果が期待できます。
カスタマーエクスペリエンスを向上させる方法
カスタマーエクスペリエンスは、顧客に対して感情的な価値を提供し、ポジティブな体験を生み出す考え方や取り組みです。
具体的には、以下の方法で向上を目指しましょう。
- 顧客データを整理する
- カスタマージャーニーを明確にする
- 企業全体でカスタマーエクスペリエンスに取り組む
以下で、それぞれ詳しく解説します。
顧客データを整理する
カスタマーエクスペリエンスを向上させるためには、顧客データの整理と分析が不可欠です。
多くの企業は、顧客の属性情報や行動履歴、購買履歴などを収集していますが、ノウハウの不足や人手不足などの理由で効果的に活用できていないケースは少なくありません。
顧客データを体系的に整理し分析すれば、「どのような情報提供やコミュニケーションが求められているのか」「どのタイミングでどんな対応が最適か」などの顧客のニーズが見えてきます。
例えば、顧客管理システムで顧客データを年齢や性別などの属性、Webサイト内での行動、実際に購入している商品の傾向などのグループに分けて分析すれば、個々人の興味や関心にパーソナライズされた提案や施策が可能です。
ただし、同じ業種でもビジネスモデルが異なれば、顧客の求める体験も変わるため、データ分析は企業ごとの戦略に合わせた設計が重要です。
顧客データの整理と分析を通じて、顕在ニーズや潜在的なニーズに気づき、顧客満足度の向上を期待できます。
カスタマージャーニーを明確にする
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、購入・利用し、リピートや口コミに至るまでの一連の行動や心理プロセスをさします。
例えば、美容院であれば以下のカスタマージャーニーが予想されます。
- 広告や口コミで美容院へのイメージを膨らます
- 他の美容院との比較検討
- 実際にカットやカラーを体験する
- 価格や接客時の対応などへの感想を抱く
- 次回の予約や友人への紹介を行う
顧客の行動を「旅(ジャーニー)」に見立てて、カスタマージャーニーを可視化することで、どの段階で顧客が離脱しやすいのか、どの接点に注力すべきなのかを把握できます。
カスタマージャーニーを明確にすれば、改善すべき課題が発見しやすくなり、結果として顧客満足度の向上につながるでしょう。
企業全体でカスタマーエクスペリエンスに取り組む
カスタマーエクスペリエンスを向上させるためには、現場の声を組織全体でフィードバックする仕組みや、全社員が同じ目標に向かう環境を整えることが重要です。
例えば、Webサイトでの顧客体験を向上したい場合は、「平均ページビュー数」「顧客獲得率」「コンバージョン率」などのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定しましょう。
定期的に効果を評価、改善する体制を作り、「どのタイミングで、どのような価値を顧客に提供したいのか」などの行動指針を具体化してください。
企業全体が一丸となって顧客満足度の向上に取り組むことで、顧客の信頼や満足度だけでなく、企業の競争力向上へとつながります。
カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上に成功した事例
カスタマーエクスペリエンス(CX)向上は様々な企業が注力しており、取り組みに成功した企業も多く存在します。企業の具体的な取り組み事例を5つ紹介するので参考にしてください。
製造業での成功事例
日産自動車株式会社では、販売している自動車の試乗予約システムにチャットボットを導入し、カスタマーエクスペリエンスの向上に成功しました。
チャットボットとは、AIを活用することでユーザーの質問に自動で応答するツールで、問合せ対応の効率化や、ユーザー体験の向上に効果を発揮します。
ユーザーは簡単に試乗予約が行え、自動車を比較検討する重要なプロセスである「試乗」へのハードルを大きく下げました。
試乗予約までの手続きがスムーズになり、結果として、試乗予約件数の増加を実現しました。
小売業界での成功事例
海外のシューズ&アクセサリーブランドALDO(アルド)では、顧客の好みや行動パターンを的確に把握するため、デジタルツールを活用した顧客データの分析を進めています。
ツールの導入により、顧客ごとのニーズや関心を深く理解し、よりパーソナライズされたサービスの提供が可能になりました。
また、複数の集客経路で情報を連携し、顧客にシームレスな体験を提供するクロスチャネル戦略の一環としてモバイルアプリを開発しており、ユーザーは自宅や外出先を問わずに商品情報をスムーズに入手できるようになりました。
顧客の利便性が大幅に向上し、ブランドへのエンゲージメントや満足度が高まったため、リピーターの増加やグローバル市場での顧客との継続的な関係構築へとつながっています。
つまり、デジタル施策を通じて、世界中の顧客に寄り添った体験を提供する形でカスタマーエクスペリエンスの向上を実現し、ブランド価値を向上した事例です。
IT業界での成功事例
株式会社クロノスでは、人材管理に関する複雑なタスクをクラウド上で簡単に行えるサービスを提供しています。
同社は「素晴らしい顧客体験の提供こそが、業界のリーダーとなるために不可欠」と考え、顧客ロイヤルティを数値化するNPS(Net Promoter Score)を導入しました。
顧客アンケートを通じてリアルタイムで顧客の声を収集し、経営陣から現場まで社内全体で共有できる体制を構築したため、顧客ニーズを常に把握し、サービスや製品の改善、新機能の開発などが可能となりました。
例えば、顧客ロイヤルティの数値化により、所定のしきい値を下回った顧客に対して電話をかけてフォローすることで、トラブルや不満に対して、積極的に改善する姿勢を見せることが可能です。その結果、顧客のカスタマーエクスペリエンスは向上し、自社への信頼度向上につながりました。
通販業界での成功事例
株式会社QVCジャパンでは、コンタクトセンターに蓄積された顧客の声を活用するツールを導入しました。
ツールの導入により全通話録音が中央サーバーで集中管理され、応対品質管理に活用できるため、より精度の高い音声分析が可能になりました。
顧客の声を収集・分析することで、企業が抱えている課題や顧客のニーズが可視化でき、良質な顧客体験の提供へとつながります。
銀行業界での成功事例
株式会社イオン銀行では、自社のWebサイトに関するノウハウや対応できる人材が不足している課題を抱えていました。
課題解決のために、まずはコンサルタントへ依頼し、社員がWebマーケティングツールを使いこなすためのスキル習得に取り組みました。
結果として、社内のデジタルマーケティングに対する意識が高まり、ツール活用の幅が広がったため、顧客データの分析と活用が可能になりました。
Webサイトを訪れる顧客の属性情報の活用により、店舗で行っている地域限定キャンペーンとWebを連動させる施策も展開できるようになりました。
顧客ごとに適した情報を提供できるため、カスタマーエクスペリエンスの向上につながり、来店促進に成功した事例です。
カスタマーエクスペリエンスの情報を収集するなら「営業・デジタルマーケティングWeek」へ
RX Japanが主催する「営業・デジタルマーケティング Week」では、カスタマーエクスペリエンスの向上につながるツールやサービスが多数展示されます。
カスタマーエクスペリエンスの向上につながるツールやサービスを詳しく知りたい、あるいは相談したい企業の場合は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。
また、カスタマーエクスペリエンスの向上につながるツールやサービスを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために出展を検討してはいかがでしょうか。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
カスタマーエクスペリエンスは企業の利益向上に役立つ
現代の顧客は、機能や価格だけでなく「どのような体験ができるか」などのカスタマーエクスペリエンスを重視して商品やサービスを選ぶ傾向が強まっています。
カスタマーエクスペリエンスを意識したサービス設計や顧客対応によって顧客満足度が向上すれば、リピーターの獲得や売り上げの増加などが期待できます。
ただし、企業ごとにカスタマージャーニーは異なるため、自社のビジネスモデルやターゲット顧客に最適な方法を見極め、戦略的にカスタマーエクスペリエンスの向上に取り組みましょう。
RX Japanが主催する「営業・デジタルマーケティング Week」では、カスタマーエクスペリエンスの向上に役立つツールやサービスが多数展示されます。
カスタマーエクスペリエンスを詳しく知りたい、あるいは相談したい企業の場合は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。また、カスタマーエクスペリエンスの向上につながるツールやサービスを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために出展を検討してはいかがでしょうか。
▶監修:青井真吾 氏
プロフィール:大学卒業後はIT企業に入社。システムエンジニアとして大手企業向けのERPシステム開発を経験。その後独立し、人材派遣、不動産、自動車、ファッション、エネルギーなど多くの業界でDX推進などのITプロジェクトに従事。現在はAOIS Consulting株式会社を設立し、エンタープライズシステムの開発・導入を支援するITコンサルティングサービスを展開している。