CRMとは?導入するメリット・デメリットや選び方、活用事例を紹介!
近年、CRMシステムを導入する企業が増加しています。そのため、企業の経営やマーケティングなどに携わっている方は、1度は「CRM」や「CRMツール」などの単語を見聞きした経験があるでしょう。ただし、「意味を正確に把握できていない」「SFAやMAとどのような点が異なるのだろうか」とお悩みの方もいるかもしれません。
CRM(顧客関係管理)とは、顧客情報を一元的に管理・分析して、顧客との良好な関係を構築し、売上増や企業価値の向上につなげる手法です。また、CRMシステムとは、顧客関係管理を実施するためのITツールです。
本記事では、CRMの意味やSFA・MAとの違いを詳しく解説します。CRMツール(システム)の主な機能や導入するメリット、デメリット、選び方や活用事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
CRM(顧客関係管理)システムの主な機能
顧客情報を一元的に管理
マーケティング・営業部門などと情報共有
営業活動の効率化を支援
データを分析してレポートを自動作成
CRMシステムを導入するメリット
メリット①業務が効率化し、生産性が向上する
メリット②情報を共有することで属人的な業務を減らせる
メリット③顧客満足度が向上し、売上増につながる
CRM(顧客関係管理)システムを導入するデメリット・注意点
デメリット・注意点①一定のコストがかかる
デメリット・注意点②顧客情報の漏洩防止対策が不可欠
デメリット・注意点③教育・研修を実施する必要がある
CRM(顧客関係管理)システムを選定・導入する際のポイント
従業員にとって活用しやすいシステム
SFAシステムなどとデータの連携が可能
厳格なセキュリティ対策が講じられている
サポート体制が整っているか
CRM(顧客関係管理)システムの活用事例
住宅建材を取り扱う総合商社の事例
ビデオアイウェアとスマートグラス製品を供給する会社の事例
CRM(顧客関係管理)とは
CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。顧客の氏名・行動履歴などの情報を一元的に管理・分析して良好な関係を構築し、売上増や企業価値の向上につなげる経営・マーケティング手法です。
CRMを実施する際には、関連するデータを一元的に管理・分析するためのツール、「CRMツール」または「CRMシステム」が用いられます。なお、「ツール」や「システム」を省略して、単に「CRM」と呼称するケースも見受けられます。
CRMとSFA・MA(マーケティング自動化)システムの違い
企業の経営やマーケティングなどに携わっている方は、CRMの他に、「SFA」や「MA」などの単語を見聞きした経験があるかもしれません。CRMやSFA、MAの役割は異なりますが、連携させて不足する機能を補い合えば、相乗効果を得られます。
SFA(Sales Force Automation)とは、営業活動を標準化・仕組み化し、効率的に遂行できるようにサポートする行為です。また、それを実現するためのツール・システムを意味する場合もあり、日本語では「営業支援システム」と訳されます。
SFAツールを用いれば、データに基づいて多種多様なアクションを自動的に実施でき、生産性が向上します。以下は、自動化できるアクションの例です。
- 見積書を作成する
- 商談を割り当てる
- メールを送信する
また、MA(Marketing Automation)とは、マーケティング活動を自動化・効率化する行為です。それを実現するためのツール・システムを意味する場合もあります。
MAツールを用いれば、トラッキングデータや自動メール配信機能などによって、対象が求める情報を適切なタイミングで提供できます。その結果、自社製品に対する興味・関心をかき立てることが可能です。MAツールは、リードナーチャリング(「見込み客」を「顧客」に育てること)に役立ちます。
SFAツールやMAツールをCRMシステムと連携させて、一元管理されている顧客情報を取り込み、業務効率を向上させましょう。
CRM(顧客関係管理)システムの主な機能
CRM(顧客関係管理)システムでは、顧客情報をデータベースに記録したり、保存された情報を業務に活用したりできます。以下、主な機能を4つ紹介します。
顧客情報を一元的に管理
CRMシステムでは、顧客の氏名や連絡先(住所・電話番号・メールアドレスなど)、購買履歴などの情報を一元的に管理できます。
部門ごとにデータが散在している状態では、業務の遂行に時間がかかります。しかし、CRMシステムで一元的に管理すれば、業務が効率化され、生産性が向上するでしょう。
マーケティング・営業部門などと情報共有
CRMシステムには、様々な部門(マーケティング部門・営業部門など)とリアルタイムで情報を共有する機能があります。
各種情報を部門間で共有すれば、営業活動やマーケティング活動をスムーズに遂行できます。なお、KPIを設定して、達成状況をモニタリングすることも可能です。
営業活動の効率化を支援
クラウド型のCRMシステムであれば、モバイル端末(スマートフォンやタブレットなど)を用いてデータベースにアクセスできます。
時間や場所を選ばずに商談の状況を報告したり、資料を確認したりできる点が魅力です。複数の関係者にメールなどを一斉送信することも可能で、効率的に営業活動を遂行できます。
データを分析してレポートを自動作成
事業を営む際には、経験や勘に頼って営業やマーケティング活動などを実施するのではなく、データに基づいて展開するべきです。ただし、顧客データを分析したり、分析結果をまとめたりする作業は、多大な時間・労力を要します。
CRMシステムを活用すれば、条件をセットするだけで自動的にデータの分析、および、報告用レポートの作成が可能です。また、ヒューマンエラー(入力ミスなど)が発生するリスクも低減できます。
CRMシステムを導入するメリット
CRMシステムには、上述したように、様々な機能があります。導入すれば、業務の効率化や生産性の向上につながるでしょう。以下、主なメリットを3つ紹介します。
メリット①業務が効率化し、生産性が向上する
様々な部門に散在していたデータをCRMシステムで一元的に管理すれば、データを探す時間を削減できます。
そして、蓄積されたデータを企業のあらゆる取り組み(営業やマーケティングなど)に活用できるため、業務をスムーズに遂行して生産性を向上できるでしょう。
メリット②情報を共有することで属人的な業務を減らせる
CRMシステムを導入せず、手作業(紙または表計算ソフトなど)で顧客管理を実施している場合、大量のデータを分析することは困難です。また、業務に習熟した特定のスタッフにしかデータを分析できない状況に陥るかもしれません。
「特定のスタッフが急病で出社していない」などの状況が発生すると、業務処理が滞り、関係先に迷惑がかかる場合もあるでしょう。
そのような状況に備えて、CRMシステムによって顧客に関する情報などを共有するべきです。属人的な業務が減り、特定のスタッフが急病などで出勤していない状況でも、業務処理が滞らずに済みます。
メリット③顧客満足度が向上し、売上増につながる
CRMシステムには、顧客ごとに過去の応対履歴が記録されます。そのため、前回とは異なるスタッフが電話やメールで対応した場合でも、同じ内容の説明を繰り返さずに済みます。
部署をたらい回しにされることがないため、顧客満足度が向上するでしょう。その結果、自社の商品・サービスを購入してくれる可能性が高まり、売上増につながります。
また、CRMシステムを導入して顧客情報を一元的に管理し、顧客情報を分析した上で関係性構築に活かせれば、顧客満足度向上および売上増も実現できるでしょう。
CRM(顧客関係管理)システムを導入するデメリット・注意点
CRMシステムを導入すれば、様々なメリットを享受できますが、いくつかのデメリット・注意点もあります。以下のデメリットを正しく理解した上で上手に活用しましょう。
デメリット・注意点①一定のコストがかかる
CRMシステムを導入・運用するためには、一定の初期コスト・ランニングコストがかかります。
社内に設置したサーバーにインストールして利用するオンプレミス型CRMシステムの場合、自由にカスタマイズが可能ですが、ハードウェアの購入やメンテナンスに費用がかかります。
一方、クラウド型CRMシステムの場合、ハードウェアを自社で用意する必要がありません。そのため、初期費用を抑えられますが、オンプレミス型に比べるとカスタマイズ性が低い傾向が見受けられる点にご留意ください。
デメリット・注意点②顧客情報の漏洩防止対策が不可欠
CRMシステムには、大量の個人情報が収集・保存されます。万が一、外部に情報が漏洩すると、企業の社会的信用が失墜し、個人情報保護法違反に問われる可能性もあります。
CRMシステムを導入・運用する場合は、情報漏洩を防止するための対策を講じなければいけません。具体的には、USBメモリなどの持ち込みを禁止する(物理的に挿入できない状態にする)ことや、アクセス制限の実施を検討しましょう。
デメリット・注意点③教育・研修を実施する必要がある
CRMツールの利用を定着させるためには、従業員に対してガイダンスや教育・研修を実施し、操作方法を習得させることが必要です。なお、全スタッフがCRMシステムを使いこなすスキルを習得するまでには、ある程度の期間がかかるでしょう。
大量の個人情報を取り扱うため、従業員のモラルを向上させることも欠かせません。また、事前にマニュアルやQ&A集の作成も実施しておきましょう。
CRM(顧客関係管理)システムを選定・導入する際のポイント
数多くのベンダーから、多種多様なCRMシステムがリリースされています。以下、CRMシステムを選定・導入する際にチェックするべきポイントを4つ紹介します。
従業員にとって活用しやすいシステム
操作が難しいCRMシステムを導入すると、従業員が習熟するまでに長い期間がかかります。従業員が入力作業に負担を感じないで済むCRMシステムを選びましょう。
導入する際は、トライアル期間を活用したり、複数のサービスなどを比較したりするなど、現場の意見を反映させた選定を行ってください。
SFAシステムなどとデータの連携が可能
CRMシステム単独でも多様な機能を活用できますが、SFAシステムやMAシステムと連携すれば、さらに業務が効率化され、生産性が向上します。
選定する際は、外部システムとデータを連携できるかどうかをチェックしましょう。なお、CRMシステムによっては、SFA機能やMA機能が標準搭載されている場合もあります。
CRMシステムで成約率の高い顧客を分析し、SFAシステムで営業プロセスを作成すれば、営業プロセスを効率化できます。また、CRMシステムで得た顧客情報は、MAシステムのペルソナ設定に活かすことも可能です。
また、各種SNSと連携可能なCRMシステムも存在します。顧客のSNSアカウントや投稿内容、コミュニケーション履歴などを管理できるため、良好な関係構築に役立ちます。
厳格なセキュリティ対策が講じられている
セキュリティ対策を適切に講じていない場合、情報漏洩につながる可能性があります。オンプレミス型CRMシステムに関しては、導入する企業の責任で厳格なセキュリティ対策を実施しなければいけません。
クラウド型CRMシステムでは、インターネットを経由して情報が送受信されます。インターネットに接続されている以上、外部からシステムに不正侵入されるリスクがあります。
導入する企業が対策を講じるだけではなく、ベンダー側でも厳格なセキュリティ対策が講じられているかどうかを確認しましょう。
サポート体制が整っているか
CRMシステム導入後に、予期せぬトラブル・不具合が発生するかもしれません。マニュアルやQ&A集が用意されていても、ITに詳しい人材がいない場合、社内で解決できないこともあるでしょう。
トラブルの発生に備えて、サポート体制が整っているベンダーのシステムを選定するほうが安心です。ベンダーによっては24時間体制でサポートを実施しているケースもあります。
CRM(顧客関係管理)システムの活用事例
CRM(顧客関係管理)システムには、上述したメリットがあり、多種多様な方法で活用できます。以下、具体的な活用事例をふたつ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
住宅建材を取り扱う総合商社の事例
ガラス・サッシ・キッチン・風呂など、住宅全般に関わる建材を取り扱う総合商社では、以前は紙ベースで日報を作成していたものの、「情報を振り返りにくい」などの課題を抱えていました。そこで、紙による日報を廃止し、日報機能が搭載されているCRMシステムを導入して営業管理を実施する方針を決定します。
まず、従業員向けの説明会を開催し、特定部署でトライアル運用を開始しました。運用開始後は、従業員が活用しやすいようにルールを定期的に更新しています。
CRMシステムを導入した結果、業務の成果だけではなく、プロセスも分析できるようになりました。
ビデオアイウェアとスマートグラス製品を供給する会社の事例
ビデオアイウェアとスマートグラス製品を供給する会社では、以前は表計算ソフトを使用して請求書を発行していたものの、スタッフごとにルールが異なり、ドル表記関連でのミスも発生していました。また、請求書関連業務の負担軽減・効率化も課題でした。
そこで、CRMシステムとデータ連携したITツールを導入し、請求管理を実施する方針を決定します。その結果、表計算ソフトでは複雑だった請求書管理をスムーズに遂行でき、検索時間も減少しました。
限られた人員で業務処理が可能な体制を構築でき、時間に余裕が生まれ、休暇も取りやすくなりました。
「営業DX EXPO」でCRMツールを探そう
RX Japanが主催する展示会「営業・デジタル マーケティングWeek」の「営業DX EXPO」では、CRMシステムが多数展示されます。
企業の経営者やマーケティングなどに携わっている方は、ご来場の上、最新情報を収集してはいかがでしょうか。また、CRMシステムを開発・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
下表に、「営業DX EXPO」の開催地域・開催場所・日程をまとめました。
CRMシステムを活用して、業務効率化・生産性向上を実現しよう
CRMとは、顧客情報を一元的に管理・分析して、良好な関係を構築・維持し、売上増や企業価値向上につなげる経営・マーケティング手法です。CRMを実施する際は、関連するデータを一元的に管理・分析するためのツール(CRMシステム)が用いられます。業務を効率化し、生産性を向上させるために、CRMシステムを導入・活用しましょう。
RX Japanが主催する「営業・デジタル マーケティングWeek」の「営業DX EXPO」では、CRMシステムが数多く展示されます。企業の経営者やマーケティングなどに携わっている方は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。また、CRMツール(システム)を開発・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、出展を検討してはいかがでしょうか。
▶監修:青井真吾 氏
プロフィール:大学卒業後はIT企業に入社。システムエンジニアとして大手企業向けのERPシステム開発を経験。その後独立し、人材派遣、不動産、自動車、ファッション、エネルギーなど多くの業界でDX推進などのITプロジェクトに従事。現在はAOIS Consulting株式会社を設立し、エンタープライズシステムの開発・導入を支援するITコンサルティングサービスを展開している。