【企業のAI活用について】導入のメリットや事例、注意点などをわかりやすく解説

近年、AIの進化に伴い、業務効率化やコスト削減、意思決定の精度向上などのメリットを目的に、AIを活用する企業が急増しています。

ただし、効果的かつ安全に活用するためには、成功事例や導入時の注意点を事前に把握しておくことが重要です。

本記事では、企業でのAI活用の具体的なメリットや各業界の事例、導入時に留意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。

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【構成展示会】
AI・業務自動化展、社内業務DX EXPO、
データドリブン経営 EXPO、現場DX EXPO


AI(人工知能)とは

AI(人工知能)とは、人間のように「学習」「推論」「判断」する力をコンピューターに持たせる技術です。

正式には「Artificial Intelligence」の略で、与えられた情報からパターンを見つけたり、過去のデータをもとに未来を予測したりできます。

例えば、画像を見て犬か猫かを識別したり、大量の売上データをもとに需要を予測したりと、AIは「考えて結論を出す」ことが可能です。

単なる自動化とは異なり、AIは経験を通じて自ら賢くなっていくため、ビジネスの意思決定や業務効率化への活用が進んでいます。


AIの定義

AIの定義は諸説ありますが、ある定義では「人間の思考や判断などの知的行動を模倣するように設計されたプログラムやシステム」とされています。

つまり、単に決められた処理をこなすだけでなく、大量のデータを取り込み、パターンを学習し、推論や予測を行うことが特徴です。

近年では、スマートフォンの音声アシスタントや顔認証、チャットボット、翻訳アプリ、医療診断支援、さらには自動運転車に至るまで、生活やビジネスのあらゆる場面でAI技術が活用されています。

AIの仕組み

AIの仕組みは、人間の思考や判断を模倣するために、以下のプロセスで構成されています。

  • 収集…センサーや入力デバイスを通じて画像・音声・テキストなどのデータを取得
  • 学習…集めたデータからパターンを見つけて機械学習や深層学習を行う
  • 推論・判断…学習結果をもとに予測や分類、判断を行う
  • フィードバック…結果の正否に応じてシステムが改善され、より精度が高まる

例えば、過去の購入履歴から顧客のニーズを予測したり、収集した画像から対象物を分類したりする処理が可能です。さらに、AIは結果に対してフィードバックを受け取り、間違いやズレを修正し、精度を向上させます。

つまり、収集からフィードバックの流れを繰り返すことで、AIは自動的に賢くなり、より高度な判断を下すことが可能です。

また、AIには以下の技術的分類があります。

機械学習

【特徴】
データから自動でルールやパターンを学ぶAIの基礎技術

深層学習

【特徴】
人間の脳の神経回路を模倣した「ニューラルネットワーク」で精度を高める

自然言語処理

【特徴】
人間の言語(日本語・英語など)を理解・翻訳・生成する技術

上記の技術は、用途や目的に応じて組み合わされ、より高度なAIシステムを構築する際に活用されます。

例えば、深層学習は画像認識や音声認識に強みを持ち、自然言語処理はチャットボットや翻訳ツール、検索エンジンなどで広く利用される技術です。

企業がAIを導入する際は、AIの学習過程を理解し、自社の課題解決に最適な技術を見極め、目的に合った形で実装しましょう。


AIによって進化した技術

AIは単なる自動化技術ではなく、様々な分野で新たな進化を遂げる基盤となっており、日常生活から産業分野まで幅広く応用されています。

AIによって進化した技術を、以下で解説します。


画像認識

画像認識とは、カメラやセンサーで取得した画像データから、AIが「何が写っているか」を自動で識別や分類する技術です。

人間の視覚を模倣し、物体や人物、文字などの特徴を捉えて解析できるため、様々な分野で活用されています。

例えば、スマートフォンの顔認証機能では個人を識別してセキュリティを強化し、自動運転車では信号や標識、歩行者を認識するため、事故防止が可能です。

また、医療分野では、レントゲンやMRI画像をAIが解析し、がんや異常の早期発見にも貢献しています。

画像認識は、業務の効率化だけでなく、人命を守る技術へと進化を続けています。

音声認識

音声認識とは、人間の話し声をAIが聞き取り、リアルタイムで文字データに変換する技術です。声の抑揚やいい間違い、雑音などの影響を受けにくくする高度な処理が行われており、近年は精度が大きく向上しています。

スマートフォンの音声入力機能や、Siri、Googleアシスタントなどの音声アシスタントが代表的な活用例です。

また、コールセンターでは通話内容を自動でテキスト化し、応対品質の分析や業務改善に役立てられます。

音声認識は、手を使えない状況での入力支援や、多言語対応の自動翻訳システムなどにも応用され、業務効率化とユーザー体験の向上に大きく貢献しています。

自然言語処理

自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)とは、日本語や英語など、人間が日常的に使う言語をAIが理解・解釈し、適切に応答・生成する技術です。

文法や意味、文脈まで考慮しながら処理するため、単語の羅列ではなく「意味のある会話」が可能になります。

代表的な例が、ChatGPTのような生成AIや、カスタマーサポートに導入されるチャットボットです。ユーザーからの質問に自然な文章で回答したり、問合せの意図を理解して適切な案内を行ったりと、人手に頼らずスムーズな対話を実現します。

自然言語処理は検索エンジンや翻訳ツール、議事録作成、SNS分析など、幅広い分野で活用されており、AIと人間とのインターフェースを担う重要な技術とされています。

最適化

最適化とは、様々な制約条件のなかから「最も効率的で望ましい解」を導き出すAIの技術です。単純な選択ではなく、コストや時間、資源など複数の要素を総合的に判断し、最善策を自動で導きます。

例えば、物流業界では、配送ルートの最適化によって移動距離や時間、燃料消費を最小限に抑えながら、多くの荷物を効率よく届けることが可能です。

また、製造業では、工場の機械稼働や作業員のシフト、材料供給などを加味した生産スケジュールの自動編成が実現できます。

最適化のAIは、従来は人間が手作業で行っていた複雑な計画業務を大幅に効率化し、人的ミスの削減やコスト削減にも大きく貢献しており、ビジネスの現場では競争力を高める強力な武器となり得る技術です。

データの分析と予測

データの分析と予測は、AIが膨大なデータをもとにパターンや傾向を読み取り、将来起こりうる事象を予測する技術です。過去のデータに潜む規則性を学習し、人間では気づきにくい関係性や変化の兆しを捉えます。

例えば、天気予報では過去の気象データをもとに気温や降水量の変化を予測し、災害リスクの早期警告が可能です。

また、YouTubeやAmazonでは、ユーザーの閲覧履歴や購買履歴から好みを分析し、最適なコンテンツや商品を自動でおすすめしています。

AIによる予測技術は、マーケティング戦略、売上予測、在庫管理など、ビジネスの様々な分野で重要な意思決定を支える手段となっています。データの活用を検討している企業にとって、有益な技術のひとつです。


企業がAIを活用するメリット

AIを活用する企業は、少ないリソースでも大きな成果を生み出すことが可能となり、競争力のあるビジネス運営を実現しやすくなります。

企業がAIを活用するメリットを、以下で解説します。


コスト削減

企業がAIを導入した場合、様々なコストを効率的に削減できます。

例えば、AIは決められたルールに従って正確に処理を行うため、人間によるミスが起こりにくくなり、修正対応の手間や再作業の発生が減り、全体の作業時間の短縮が可能です。

また、定型的な入力作業やデータ集計などをAIに任せることで、担当者の工数を大幅に減らせます。結果として、同じ業務をより少ない人員で回せるようになり、人件費の最適化が可能です。

さらに、需要予測AIを活用すれば、仕入れや生産の最適化が進み、在庫の持ちすぎや欠品を防ぎ、不要な保管コストや廃棄コストを抑えることができます。

AIの活用は、目に見えるコストだけでなく、見えにくい無駄の削減にもつながり、企業の収益性向上に大きく貢献する可能性があります。

意思決定の精度向上

AIは膨大なデータを短時間で分析し、判断基準をモデル化すれば、常に一貫性のある判断を導き出すことができます。担当者の経験や感覚に頼ることなく、客観的で再現性のある意思決定が可能です。

さらに、AIは複数のシナリオを瞬時に比較、分析し、最も効果的な選択肢を提示できます。

例えば、新商品の投入タイミングや販促施策の効果予測などで、最適な打ち手を素早く導き出すことが可能です。プロジェクトの進行がスムーズになれば、ビジネスチャンスを逃さずに対応できます。

つまり、AIは意思決定の質を底上げし、経営のスピードと柔軟性を向上させる強力な支援ツールです。

人手不足の解消

AIは、人手不足が深刻な業界で業務の一部を自動化し、作業負担を軽減する有効な手段です。特に、繰り返し発生するルーチンワークや単純作業に強く、安定した精度で処理を行えるため、業務品質を維持しながら人員の省力化につながります。

例えば、小売業界で導入が進む無人決済システムやセルフレジでは、従来、人手が必要だった会計処理の自動化が可能です。会計処理が自動化されれば、レジ対応にかかる人員を削減でき、接客や売り場管理などの別業務への人材配置がしやすくなります。

業種や企業規模に応じて適切な導入設計を行うことで、持続可能な業務体制の構築にもつながります。人手不足への対策として、AIの導入はひとつの選択肢となります。


企業がAIを活用した事例

企業によるAIの活用は年々広がりを見せており、現在では業種を問わず多様な分野で導入が進んでいます。かつては一部の先進企業に限られていた取り組みも、今では多くの企業で実用段階に入っています。

以下で、企業がAIを活用した事例を業界ごとに紹介します。


鉄道業界

ある鉄道会社では、お問合せセンターにAIを導入し、業務支援システムとして活用しています。

顧客からの電話内容をリアルタイムで解析し、最適な回答候補をオペレーターに提示する仕組みです。オペレーターはAIの提案をもとに対応するため、回答の精度が向上し、対応時間の大幅な短縮にもつながっています。

また、属人化していた対応品質のばらつきが改善され、経験の浅いスタッフでもスムーズに業務を遂行できるようになりました。

航空業界

航空業界では、AIを活用した顔認証システムによって、出入国手続きの効率化が進められています。

例えば、法務省入国管理局は、羽田空港での日本人の帰国手続きに「顔認証ゲート」を導入しています。パスポートのICチップに記録された顔画像と、ゲートで撮影された顔写真をAIが自動で照合し、本人確認を行う仕組みです。

このようなシステムの導入により、書類確認や対面での審査が不要となり、手続き時間の大幅な短縮と空港職員の業務負担軽減が図られています。結果として、出入国管理業務の全体的な効率化につながっています。

小売業界

小売業界では、顧客対応の効率化や人手不足の解消を目的に、AIチャットボットの導入が進んでいます。

例えば、ある通信販売事業者では、カスタマーサポート窓口にAIチャットボットを導入し、顧客からの問合せ対応を自動化しています。このチャットボットは、自然言語処理技術と学習機能を備えており、顧客の質問の意図を正確に理解し、適切な回答をリアルタイムで提供可能です。

これにより、従来オペレーターが対応していた業務の一部が代替され、応答スピードの向上と業務負担の軽減が実現されています。

製造業

製造業では、出荷計画や在庫管理の精度を高める手段として、AIを活用した需要予測の導入が進められています。

例えば、あるビール会社では、自社製品の出荷に関する需要予測にAIを導入し、人とAIが連携して予測を行う体制へと移行しました。従来は熟練担当者の経験に依存していた判断を、AIの分析結果と照合することで、より客観的で安定した予測が可能となり、予測精度は約20%向上しています。

さらに、AIが過去のデータから継続的に学習を重ねることで、判断の的確さが向上し、コスト削減や業務効率の改善、意思決定の質の向上にもつながっています。この取り組みは、AIと人が役割を補完し合いながら業務を進化させる一例です。


企業がAIを活用する際の注意点

AIの活用は業務効率や意思決定の高度化に大きなメリットをもたらしますが、一方で適切な運用を行わなければ逆効果となるリスクが潜んでいます。

企業がAI活用に際して効果的かつ安全に進めるには、以下の点に注意しましょう。


精度や判断が不透明

AIの判断には高い精度が求められますが、「なぜその結論に至ったのか」が人間には分かりにくい課題があります。

特に深層学習などの高度なAIモデルは、内部の処理が複雑でブラックボックス化しやすく、結果の理由の説明が困難です。

AIの判断根拠が不透明なまま結果だけを信頼すると、誤った判断によって業務トラブルや顧客クレームに発展するリスクがあります。

例えば、審査や診断などの業務で誤認識や誤分類が発生しても、なぜ間違ったのかを説明できなければ、信頼性を損なう要因になる可能性があります。

企業がAIを導入する際は「説明可能なAI(Explainable AI)」の採用や、結果を人間が検証できる仕組みづくりが重要です。

学習データの偏りによる誤動作

AIは与えられたデータをもとに学習を行うため、学習データに偏りがあると、AIが不公平または差別的な判断をしてしまうリスクがあります。

例えば、性別や年齢、地域など特定の属性に偏った情報しか含まれていないデータで学習させた場合、公平性に欠ける判断を下す可能性が高いです。

偏ったAIによる誤判断が現場で使われると、顧客対応の質が低下したり、意図しない差別的な処理が行われたりして、企業の信頼や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

AIを導入し運用する企業は、出力された結果を定期的に評価し、偏りがないかをチェックする体制を整えましょう。

情報漏洩やセキュリティリスク

AIが扱うデータのなかには、機密情報や個人情報など、外部に漏れると大きなリスクとなる情報が多く含まれます。

データを適切に管理せずにAIに学習させたり処理を任せたりすると、情報漏洩の原因となり、企業の信用や法的責任に関わる重大な問題へと発展する可能性があります。

特に、外部の生成AIやクラウド型AIサービスを利用する場合には、データの取り扱い方や保管場所、再利用の有無などを提供元との契約内容や利用規約を事前に確認しましょう。

AIを安全に活用するためには、社内でのセキュリティルールの徹底に加え、第三者サービスの選定や契約管理も含めた包括的な対策が必要です。


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日本最大級のDX総合展

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▶監修:青井 真吾 氏

大学卒業後はIT企業に入社。システムエンジニアとして大手企業向けのERPシステム開発を経験。その後独立し、人材派遣、不動産、自動車、ファッション、エネルギーなど多くの業界でDX推進などのITプロジェクトに従事。現在はAOIS Consulting株式会社を設立し、エンタープライズシステムの開発・導入を支援するITコンサルティングサービスを展開している。

HP: https://aoisconsulting.com/