作業手順書とは?必要な理由やメリット、作り方のポイントなどを解説

作業手順書を整備することで、業務を効率的に進められるうえ、誰でも同じクオリティで作業を再現できるようになります。これにより、教育期間の短縮や品質の安定にもつながります。

ただし、業務の内容によって記載すべき項目や構成が異なるため、作業手順書の作成には一定の工夫が求められます。

本記事では、作業手順書が必要とされる理由や導入によるメリットに加え、効果的に作成するためのポイントについてもわかりやすく解説します。

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作業手順書とは?

作業手順書とは、現場ごとの作業を誰が行っても同じ品質で再現できるよう、工程を細部まで文書化したものです。「Standard Operating Procedure」を略してSOPとも呼ばれます。

製造業では設備や工程ごとの操作手順、医療現場では治験プロトコル、農業では農薬散布手順など、作業の効率化・標準化・リスク管理が求められる分野で、作業手順書は欠かせない存在です。

また、日本では労働安全衛生法第59条および労働安全衛生規則第35条により、新規採用や作業内容の変更時に安全衛生教育の実施が義務付けられており、その教材にも作業手順書が活用されています。


作業手順書が必要な理由

作業手順書が求められる最大の理由は、最適な手順を誰もが安全に再現できるため、ムリ・ムダ・ムラを排除できる点にあります。

統一された手順を共有すれば、経験の差に左右されず一定品質を保つことができ、生産ロスや事故のリスクも低減します。

さらに、進捗やコストの数値管理がしやすくなり、経営判断や改善サイクルのスピードが向上するため、全体の効率と品質向上にもつながります。加えて、作業手順書を整備することで、新人教育のコストを抑えながら即戦力化を図ることも可能です。

このように、複数のメリットが得られるため、作業手順書の作成は事業運営で極めて重要な役割を果たします。


作業手順書を導入するメリット

作業手順書は、単に作業を可視化するだけでなく、現場での混乱やムダを減らし、業務全体の流れを効率的かつ安定的に運用できる資料です。

そのため、作業手順書を導入すれば、以下のメリットが得られます。

  • 作業時間を短縮できる
  • 業務の質を安定させる
  • ノウハウを共有しやすくなる
  • 教育にかかる手間や時間を短縮できる

それぞれ、以下で詳しく解説します。


作業時間を短縮できる

作業手順書には、工程順序や使用ツール、注意すべきポイントが網羅されているため、現場では「次に何をすべきか」で迷う時間がほとんど発生しません。

例えば、製造業で作業手順書が存在しない場合、材料の選定や必要な道具の準備などに個人差が生じやすく、それにより作業時間が余計にかかるリスクが高まります。

作業時間や残業時間の削減を目指すのであれば、作業手順書の導入を積極的に検討することをおすすめします。


業務の質を安定させる

作業手順書は、最適解を誰でも再現できるように言語化した書類です。工程ごとの条件値や判断基準を共有できれば、現場の裁量幅を最小化し、品質のムラやヒューマンエラーが大幅に削減され、業務の質が安定します。

また、業務の質が安定すれば、検査や手直し、クレーム対応などに必要なコストが減り、クライアントからの信頼向上につながるでしょう。

自社のブランドや信頼を向上させられれば、価格競争に巻き込まれにくい競争優位性の確立が期待できます。


ノウハウを共有しやすくなる

特定の人物のみが作業内容を把握している状況では、担当者の休職や退職によって生産性が急落するリスクを避けられません。

作業手順書を作成し、個人に依存していたプロセスや判断基準を言語化・共有することで、誰でも同じ手順を再現できる体制を整備できます。つまり、ノウハウをまとめた作業手順書があれば、欠員が発生しても業務品質を維持することが可能です。


教育にかかる手間や時間を短縮できる

新入社員や異動者への教育は、現場にとって大きな負担となりやすいです。従業員ごとに業務経験や理解度に差があるため、個別対応をしていると作業効率の低下を招く恐れがあります。

作業手順書があれば、指導者の経験やスキルに左右されず、一定レベルの教育を実施できるため、学習のばらつきを抑えることが可能です。また、作業内容に変更がない限り、次回以降の教育にも活用できるため、手間や時間を抑えながら、安定したスキル習得をサポートできます。


作業手順書を導入する際の注意点

作業手順書は、作業時間の短縮や業務品質の安定など多くのメリットをもたらしますが、以下のような注意点も存在します。

  • 作業手順書に縛られてしまう
  • 作業手順書の作成に時間がかかる

作業手順書は作業内容や手順を明確に定めるため、現場での柔軟な判断や改善の発想を妨げる恐れがあります。

特に、医療や看護など状況に応じた臨機応変な対応が求められる業務では、かえって生産性や効率を低下させるリスクも考慮すべきでしょう。

また、業種や作業内容によって異なりますが、作業手順書を正確に作成するためには、現場へのヒアリングや内容確認などのプロセスが求められ、一定の時間と労力がかかる点も注意が必要です。


作業手順書を活用するシーン

作業手順書は、業種や職種を問わず、幅広い場面で活用されています。

例えば、サービス業では、顧客応対や商品説明のフローを作業手順書で共有できるため、接客の質を均一化できます。

全国に多数店舗を抱える飲食チェーンでは、紙ベースのマニュアルでは内容の更新や確認に手間が掛かると考えて、スマホで確認できる作業手順書ツールを導入しました。

ツールには動画や画像を簡単に盛り込むことができ、個人のスマホから確認できるため、働いているスタッフが好きなタイミングで勉強できます。紙ベースのマニュアルに比べて内容が充実し、利便性が高まったと高評価を獲得した事例です。

他にも、営業職では新人に対して自社の商品やサービスを理解させ、顧客に対して説明する際の流れなどを体験させる必要があります。

作業手順書があれば、自社の商品やサービスの理解が進み、手本となるロープレ動画を盛り込めば、他の社員が傍に付いていなくても一定のレベルに到達できるため、教育の標準化や新人教育の短縮化などに役立つでしょう。

例えば、あるメンタルヘルスケアやリスク管理、保険関連サービスを提供する会社では、部署ごとに異なる作業手順書を用いていたため、教育品質に差が生じていることが課題でした。

そのため、新人教育の品質を一定に保ちつつ、育成工数を減らせる作業手順書ツールを導入しました。ツールによって、新人は一定レベルの教育を受けられ、従来は16時間かかっていた研修が2.5時間に短縮され、教育の標準化や新人教育の短縮化に成功した事例です。

業務の標準化や教育効率の向上などを考えている方は、作業手順書の導入を検討しましょう。


作業手順書の作成方法

作業手順書を導入して業務時間の短縮や品質の均一化を実現するためには、正確かつ実用性の高い内容で作成することが重要です。

実用的な作業手順書を作成するためには、以下の手順に沿って進めましょう。

  1. 必要な作業内容を洗い出す
  2. 作業手順書の構成を考える
  3. 構成に沿って詳細な説明を記入する
  4. 作業手順書を現場と共有してフィードバックを受ける
  5. フィードバックから内容を更新する

それぞれのステップを、以下で詳しく解説します。


①必要な作業内容を洗い出す

作業手順書を作成するにあたり、まずは対象業務の全体像と必要な作業内容のを把握が大切です。

どの作業が、どの順番で、どのツールや機器を使って行われるかを、もれなく洗い出しましょう。

また、通常業務だけでなく、例外的なケースや対応パターンも整理しておくと、現場での実用性が高まります。

現場でのヒアリングや作業観察、チェックリストの活用が情報収集には有効です。手順書の完成度を左右する重要なプロセスなので、丁寧に時間をかけて進めましょう。


②作業手順書の構成を考える

作業内容を洗い出したら、次に手順書に盛り込むべき「項目」を検討します。「何を」「どうやるか」を一目で理解できるように、「項目」をパーツごとに整理しましょう。

下表に、作業を正確かつ安全に実施するために必要な主な情報をまとめました。

作業名や目的
【概要】
何の作業なのか理解できる名称をつける
作業で達成すべきゴールを明確にする

インプット
【概要】
作業に必要な材料やツールなどを提示する
 

手順やポイント
【概要】
作業の手順を時系列に記載する
手順ごとに必要な要点を補足する

判断基準
【概要】
作業の合格基準や不合格の見極め方を説明する
 

注意事項
【概要】
安全確保や品質維持のために必要な注意点を盛り込む

なお、作業手順書の構成や内容は業種や作業内容にあわせ決めるべきです。

例えば、製造業では、作業の順序、作業名、各工程の概要、担当者、使用ツール、安全面での注意事項などを網羅する必要があります。

構成を考える際のポイントは、項目数のバランスです。項目が少なすぎると情報が不足し誤解を招き、多すぎると確認作業が煩雑になり現場での使い勝手が悪くなります。必要十分な情報に絞り込み、誰もが使いやすい手順書を目指しましょう。


③構成に沿って詳細な説明を記入する

構成が決まったらその骨子に沿って具体的な作業内容を記入していきます。この際は、「誰が読んでも理解できる表現」を意識することが重要です。専門用語や略語の多用は避け、必要に応じて図や写真、具体例を活用して、視覚的にもわかりやすい内容にしましょう。

特に現場未経験者や新人が読むことを想定し、迷わず作業できるレベルまで丁寧に記述することが、教育コストの削減にもつながります。


④作業手順書を現場と共有してフィードバックを受ける

作業手順書は作成しただけでは完成ではありません。実際に現場で使用してもらい、運用上の課題や改善点の把握が必要です。

机上では完璧に見えた内容でも、現場で使ってみると抜け漏れや誤解を招く表現が判明することは珍しくありません。そのため、作成後は必ず現場担当者に共有し、実使用に基づくフィードバックを収集しましょう。


⑤フィードバックから内容を更新する

現場から寄せられたフィードバックは、より実用的な手順書を完成させるための貴重なヒントです。

曖昧な表現、不足している手順、現場の実態と合わない内容が明らかになった場合は、速やかに修正・加筆を行います。

更新時には、「誰が読んでも理解できるか」「同じ手順で同じ成果が得られるか」という視点を持って見直しましょう。最終的には、経験が浅い人でも正確に作業を再現できる、現場に定着する手順書を目指してください。


作業手順書を作成するポイント

現場未経験や新人でも一定の品質でスムーズに作業を行える状態にするには、作業手順書を作成する際に、読み手の理解度や業務内容の変化に応じた工夫が欠かせません。

実用性の高い手順書を作成するためにも、いくつかのポイントを意識して取り組みましょう。


理解しやすい内容を意識する

作業手順書は、誰でも同じように作業を再現できる状態を目的としています。そのため、読む人が専門知識を持っているとは限らない点を念頭に作成しましょう。

とくに、新入社員や異業種からの転属者にとっては、専門用語や業界特有の略語がハードルになります。文章は簡潔に、表現は平易にし、必要に応じて図や写真を使って補足しましょう。

従業員ごとに理解度は異なりますが、難しい表現を避ければ理解のばらつきを減らし、業務の質の平均化につながります。


写真や動画を活用する

作業手順書では、文字情報だけでは伝えきれない工程や動作を補う手段として、写真や動画の活用が効果的です。

例えば、手の動きやツールの使い方、完成形のイメージなど、細かい作業手順は視覚的な情報を加えることで理解度が向上します。

また、動画や画像をクラウドで共有できるツールを活用すれば、チーム全体で内容を確認でき、更新や修正をスムーズに行うことが可能です。


定期的に内容を見直す

作業手順書は一度作って終わりではなく、業務の変化に応じて進化させる必要があります。

例えば、現場では新しいツールの導入や工程の見直しが頻繁に行われるため、手順書の情報が古くなると、かえって誤解や作業ミスを招く可能性があります。

作業手順書の定期的な点検と更新作業をルーチンに組み込み、現状に即した内容へとアップデートしましょう。


作業手順書の情報を収集するなら「現場DX EXPO」へ

RX Japanが主催する「Japan DX Week」の「現場DX EXPO」では、作業手順書に関するツールやサービスが多数展示されます。

ツールやサービスを導入すれば、従業員がオンライン上の作業手順書を好きなタイミングで確認できるため、自主学習が促され、教育効率の向上が期待できます。さらに、紙ベースの作業手順書に比べて内容の更新がしやすいこともポイントです。

作業手順書に関するツールやサービスを詳しく知りたい、あるいは相談したい企業の場合は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。

また、作業手順書に関するツールやサービスを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために出展を検討してはいかがでしょうか。

下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。


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【構成展示会】
AI・業務自動化展、社内業務DX EXPO、
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作業手順書で業務の効率化や教育期間の短縮を目指そう!

作業手順書は、業務を正確かつ安全に進めるための手順を文書化した重要な資料です。誰が担当しても同じ作業品質を維持できるため、業務の効率化や教育期間の短縮に大きく貢献し、ミスやムラを防ぐことで製品やサービスの品質向上にもつながります。

ただし、はじめて手順書を作成する場合は、工程の洗い出しや文章化に一定の時間が必要であり、読み手にとってわかりやすい表現や構成を意識することが重要です。

一から作成する負担を軽減するためには、作業手順書作成ツールの活用を検討するとよいでしょう。

RX Japanが主催する「Japan DX Week」内の「現場DX EXPO」では、作業手順書に関するツールやサービスが多数展示されます。

作業手順書に関するツールやサービスを詳しく知りたい、あるいは相談したい企業の場合は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。また、作業手順書に関するツールやサービスを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために出展を検討してはいかがでしょうか。

 

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▶監修:田中嘉浩 氏

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 DX推進コンサル部 部長

システム会社での開発から運用の経験を活かし、中小企業でのシステムリプレイスや業務の可視化を中心に活躍中。特に経営者から担当者まで全体を見渡したプロジェクトの管理と進行能力は評判で、「安心と信頼」をモットーに中小企業~大企業まで幅広くIT化を推進している。

HP:https://toma.co.jp/